父の素っ気ない返事を無視して、

「全部! 全部好きなんだって。
すごくない?」

興奮する旭を尻目に、父は、

「佐久間さん、奇遇ですね。
私も暁里の全部がかわいくて仕方ないん
ですよ。
だから、暁里が東京にいる間、少しだけ
お貸ししますが、絶対に差し上げませんから
覚えておいてくださいね。」

と言って、にっと笑った。

「お父さん!!」

私が口を挟むと

「じゃ、私は着替えてきますから、ゆっくり
なさっていってください。」

と言って、父は居間を出ていった。

「もう!」

私は父が出ていったドアをにらんだ。

「悠貴さん、失礼な家族でごめんなさい。」

私が謝ると、

「なんで?
全然、失礼な事なんてされてないよ。
あれは、暁里と付き合う事を認めてくれた
って事でしょ?」