悠貴さんは、お城を出ると、更に山道を先に進む。

着いたのは、大きなダム。

「先週、水曜日から大雨が降っただろ?
だから、運が良ければ、放水が見られるかも
しれない。」

と悠貴さんが言った。

先週、私が初めて契約を取った日から、台風の影響で3日間全国的に大雨が降った。

ダム湖を眺めながら手を繋いで歩いていると、サイレンが鳴った。

「放水だ。」

悠貴さんに連れられて行くと、放水が始まり、コンクリートの斜面を水が流れ落ちて行く。

「これ、何で?
鱗みたい。
わざとこうなるように作ったの?」

流れ落ちる水が、白い鱗模様を描いている。

「こんな模様が出るのは、偶然らしいけど、
綺麗だろ?
ダム湖の放水って、滝のように落ちるイメージ
だったけど、この鱗みたいなのもいいよな。」

悠貴さんは私の腰に手を回して抱き寄せた。

しばらく眺めて、放水が終わると、

「遅くなると、家の人が心配するから、
そろそろ帰るか。」

と悠貴さんが言った。