"鬼"上司と仮想現実の恋

突然、話を振られて、私は狼狽えた。

田中君は、なおも畳み掛ける。


30分後、山波社長は、購入を決定した。

「では、明日、正式な契約書を持って
伺います。
本日は貴重なお時間をどうもありがとう
ございました。」

田中君は、爽やかな笑顔できっちりとお辞儀をする。

私もそれに合わせて、90度の礼をした。


山波電子さんを出ると、田中君は小さくガッツポーズをした。

「おめでとう!」

私が言うと、

「ありがとう。」

と田中君は嬉しそうな笑みを浮かべる。

「お昼はお祝いだね。」

と私が言うと、

「悪い、瀬名。
次のアポまで時間がないんだ。
そこのファストフードで我慢して。」

と田中君は申し訳なさそうに言った。