真由美は

愛車に乗って、

集落から離れた場所に来ていた。

少し一人になりたかった。

誰にも干渉されず、

自由な時間をご褒美に、

じっくり自分を見つめ直していた。



ついでに携帯もチャージ。

電池がなくなりつつある。

電話は使えないけど、

役に立つことがあるかもしれない。

ケーブルで充電しておこう。



有馬の山々や村人や温泉が、

心と体の緊張を緩めて、

細胞レベルでリフレッシュ!

自分を解き放っていった。



この世界に来て

驚いたこと、

悲しかったこと、

嬉しかったことのすべてが、

絵の具のように混ざりあい、

最後にどんな色が加わるのか、

これから何が始まるのかわからないけど、

生きている充実感をかみしめていた。



嬉しいことはもう一つ、

命を懸けて守ってくれた、

西宮の回復は想像以上に早く、

明日には港町へ帰れそうと言う。



お舘さまに黙って有馬に来たことを思い出す。

抱きしめられた時から10日は経っている。



逢いたいなぁ…独り言が口に出る。

声の大きさに自分でも驚く。

私、お舘さまが好きだ。

湧き上がる思い。



出会いは偶然なのか、

必然なのか、

全く分からないけど、

気がつけば、好きになっていた。



京都から有馬までの距離が

時空の歪みに匹敵しているのか、

いつかまた現代に戻れるのか、

戻れないのか、

戻りたくないのか、

将来自分がどうなるのか、

わからないことばかり。



自分のことなのに、

数分後のことすら予想できない。

確かなのは、

お舘さまが好きな今の気持ち。



誰にも邪魔されたくない、

私の心の奥に灯ともった、温かな気持ち。

誰にも立ち入らせない、心は私だけのものだ。

好きという気持ちを大切に、

それと同じくらい自分のことも好きでいよう。



今までは自分のことが大嫌いだった。

その時の自分ごと全部捨てて、

新しく生まれ変わろう。

自分を好きでいるために。

自分を大切にしよう。

誰に何と言われようと、

私はわたし。



なんか自分なりの結論が出て、

勝手に一人でさばさばしていた。



うん!

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