大広間では地図を前に、軍議が始まっていた。



お舘さまが到着するまでの時間はいくらもない。

休む間もなく、御影さんが話しだす。



御影さんの最新情報では、

西の須磨にはお舘様異母兄弟の秀雅さまが、

東の芦屋には叔父上の秀宗さまが、

守りを固めているという。

素早く櫻正宗の陣形が地図上に形作られていく。



裏山からの様子も続々と伝えられた。



川の扇状地となっている場所に、

300人くらい集まっていること。

周辺の村々から高値で馬が買い取られ、

集められていること。

港の暴動が失敗したと伝わっていないのか、

櫻正宗の情報戦が効いて混乱しているのか、

まとまりのない集団のように見え、

直ぐに動く気配がないこと。



この雨も足止めとなり、

天が味方してくれている気がする。



決断の時が迫ってきている。

敵にわからないよう、

慎重にコトを運ばなければならない。



攻めてくるなら、

有馬口が危ないと、皆が思っていた。

険しい山と山の間を川が流れて、

川に沿って道が続いている。

この山道で戦うのは難しい。

きっと、下流から上流に向かって、

一気に登ってくるはずだ。

馬で通るなら尚更、他の道は考えられない。

間違いなくこの道だ。



有馬口は、敵の上流にあたる。

一歩たりとも、先へ進めないように、

ここも堰き止め、

沈下橋を使えなくする。



近くの、ため池を二つ選定し、

水がうまく扇状地へ導かれるように、

高低差と経路を考える。



工事を効率的に進めるには、

ため池一部を切り崩し、

流れる水の勢いを借りて、

決壊させることになった。



また、ため池を崩すためには、

集落の者だけでは人数が足らず、

近隣の村からも応援にやってきた。



援軍としてやってきた先遣隊も、

本隊が到着するまで

土木工事を手伝うこととなった。



みなが一丸となって

領地を守ろうとしている。



雨足がだんだん強くなってきた。



休む間もなく、突貫工事が進められた。

昼になり、夜になり、

朝が来ても雨が降っていた。

その間も、工事は進んでいく。



女たちは食べ物を作り、

年寄り子どもたちは真由美の指示で、

ぼろ布をいくつも丸めた。



雨の中、

続々と援軍がやってきた。



二日間、不眠不休で土を運び、

石を積み上げ、水路を作っていく。



三日目の朝早く、お舘さまが到着。



北の有馬も順次、布陣していく。