ホストブームという物があった。TVでは特集を組まれ、雑誌にも載る。会えるアイドルの様な印象があった。そういう世間から逸脱した者が好きな友人が、最も有名な店に通いだした。大学生のバイト代で通えるんだと勘違いしたが、友人はキャバクラで稼いでいた。ナンバー入りのホストとSEXまでしてると聞いて驚いた。この時は知らなかったが、客と寝ることを枕と呼び、一種の営業スタイルだそう。
私には分からなかった。恋人でもないのに、何で割り切れるんだろうって。私は未だ処女だった。

暫くしてから、変わり者の友人から誘いが来た。直己が兄のホストクラブに入ったから見に行こうと。直己は私も合コンした際に知り合ったが、似合わないと感じた。それよりオーナーの弟だった事に驚いた。それならそう危ない目には遇わないかと、クラブに訪れた。TVで観た時から、敦さんにしようと思ってはいたけれど、次々とホストがやってきては去って行った。苦笑いをしながら会話をし、早く決めさせてくれないかなと思っていた。最後になり、友人と誰がいいかを話したら、2人して敦さんだった。優しいお兄さんタイプだった。じゃんけんして負けた私は、2番手に気に入っていたホスト花奏(かなで)に決めた。此れが人生の転機となった。接客してた時の彼は口数の多いタイプじゃなくて、質問に答えるって感じで、それでも顔面レベルが群を抜いていた。
まともな話も出来そうだったけれど、それは甘く見過ぎていた。指名をすると、何で俺なの!?全然喋ってないやんと言うので、いやーだってかっこよかったから!と私も素直に答えた。正直、彼の売りは顔で正解だった。新人だが新人ナンバーワンだった。綺麗な素顔のビジュアル系に見馴れた私でも、見入ってしまうほどの美形だった。だから、高望みしてしまったんだ。帰り際、階段上まで送ってくれて、途中で振り向いたら自販機の前でジュースを飲みながら手を振ってくれた。嬉しかった。手振りひとつで、また会いたいと思わせてくれる。

2回目。癖のある友人と、また来店した。
勿論喜んでくれて、でもミラーボールを鏡がわりにしているのを見て、ナルシストなんだなと気づいた。あんまり気づきたくなかった。敦さんは携帯ばかり見ているので敦さんにしなくて良かったとは思った。恐らく客の優先度があったのだろう。

3回目。店での事はよく覚えていない。ただ、今やりたいと言われ、2人でこっそり店を出て隣のビルでそういう感じにはなったけれど、上手くいかなかった。この手の話は割愛させていただく。

そして彼は、いなくなった。