「おい、芹澤。眉毛が呼んでたぞ」

私達のクラス1-Dの担任の先生は、皆から眉毛と呼ばれている。

まさにへのへのもへじのような、綺麗なへの形をした眉毛をしているから眉毛だ。

「えー、なんだろ」

眉毛が私を呼ぶ時は大体こき使われる。

私はブツブツとぼやきながら教室を出た。

「なんですか、眉毛先生」

眉毛はため息を大袈裟に吐いて私をギロりと見た。

「あのな、芹澤。別に俺の事を影で眉毛と呼ぶのはかまわないが、本人を目の前にして言うんじゃない」

普段でさえ眼力強いんだから、そんな顔で極力こっちを見ないで欲しい。

体育の先生というのは、なぜこうも癖が強いのか。

いや、学校の先生は大体癖が強いか…。

「で、なんなんですか?」

「いやな、お前に1つ頼み事があるんだが…」

凄く嫌な予感しかない。

「飯島にこれ渡しておいてくれないか?」

あー、やっぱりそうなるか。

先生は私がイエスマンだと知っているのだ。

人の頼みを断れない。それが私の短所であり、長所だとも思う。

頼んで来た人が例え知らない人でも、きっと言う通りにしてしまうだろう。

自分で渡せよ、と心の中で吐きながら

「分かりました」

と、やっぱり言ってしまうのであった。