専務室に戻ると、執務室ドアをノックする。


「入って」


その声を聞いて扉を開ける。


「失礼致します」


入れば三笠さんと向かい合って応接ソファーに腰掛けてる専務と三笠さん。

どうやら完全にオフモードに入っている模様。


テーブルにコーヒーを置くと私は退室すべく下がろうとした。

「菜々子、君も休憩。これ飲んでいいからこっち座って」

そうして手を引かれて専務の隣に腰掛ける。


「啓輔、頑張れよ!あ、俺先に昼休憩入るからごゆっくり」

そう言うと立ち上がった三笠さんは後ろ手に手を振りさっさと出て行ってしまう。

「何があったの?」

今は雰囲気の落ち着いた啓輔さんに私はそう問いかけた。


「アホ兄貴とクソ親父がな、俺に政略結婚持ちかけてきたからブチギレて会議を出てきた…」


普段聞かない口調とあまりの内容に、目も口も開けてアホな顔を晒してしまった私に


「なぁ、菜々子。付き合いは短いけど俺はもう菜々子しか要らないんだよ。俺の七夕の願いごと叶えてくれないか?」


折しも今日は七夕だ。

しかも恋人の願い事。
叶えられるなら叶えたい。

「私で出来るなら」