そんなふうに思いつつも、顔が赤くなったり。
こんな思考している時点で、私も何だかんだ相手が気になってるわけで…。

「啓輔さんは、会社の経営者一族でしょ?こんな一般サラリーマン家庭に育った普通の私でいいわけ?」

うん、聞き方が卑屈。
でもしょうがない。
聞いたことは事実だし…。


「いや、こんな才女の菜々子は普通じゃないでしょ?超優秀なキャリアウーマンで、綺麗なものや自然が大好きな可愛らしい女性だよ。そして、俺の特別な人」


あぁ、もう抗えないな。
この人、どこまでも真っ直ぐだし。
逃げても追っかけてくるだろうし。

そもそも、私にそろそろ逃げる気がなくなってきたし。


「彼女になると、どうなるの?」

思わず、また意地悪な聞き方をする。

「ん?今以上に俺が我慢しないから。色々菜々子が大変かもね?でも受け入れて」

甘い顔で低く甘い声で。
私の耳元で囁く。


仕方ない、絆されてあげよう。
きっとあの一夜で、私たちは既に一歩を踏み出していて。
私がそれを認めなかっただけだから。


「良いよ、お付き合いしましょう。ちゃんと大切にしないとすぐどっか行っちゃうけど、それでもいい?」

そんな私の素直じゃない言葉にも、彼はクスクス嬉しそうに笑って答えた。


「思いっきり甘やかして大切にするから、どこにも行かせないよ」

そして、私たちは久しぶりにキスを交わす。

それは甘く、優しく私を溶かした。