「良く知ってるな?」

思わず眉間に皺を寄せて聞くと


「彼女、綺麗め美人だろ?高嶺の花で有名でな。身持ちも固くて彼氏が居るで告白してくる同僚は滅多斬りって噂なの。これは人事部にいる田沼からの情報」


人事部新卒採用課の課長になってる田沼は俺と誠と同期で大学も同じだった、俺が専務になっても態度の変わらぬ数少ない友人である。

「ほう、田沼からなら間違いないな」


そして、人事部と経理部は同じフロアだ。
彼女の話なら前の男は人事部所属か…。


「そう言えば、人事部では近々誰か結婚するんだろ?」

「あぁ、確か橋詰さんの同期で陶野って言ったかな?社外の大学からの彼女とデキ婚らしいよ?なんでそんな事逆にお前が知ってるの?」

思わずというツッコミを貰い


「まぁ、色々あってな?なぁ、来年度から橋詰さんを秘書課に回せないか?」


その問いかけに目を剥いて驚く誠に


「彼女が俺の最初で最後の恋人だから。必ず捕まえる…」


橋詰さんを見つめながら、そう呟く俺を見て誠はため息をつきながら言った。


「あぁ、橋詰さん。なんて男に目をつけられたのか。もう逃げ道は無いね…」


こうして、逃げられたと落胆したその日に彼女の名前も所在も分かり、俺は彼女を捕まえるために動き出したのだった。