アスカラール

「ああ、どうもありがとう」

成孔は美都の手から紙袋を受け取った。

「それじゃあ、私はこれで…」

「待って」

成孔が紙袋を受け取ったのでその場から立ち去ろうとしたら、彼に腕をつかまれた。

「えっ、あの…」

腕をつかまれて戸惑っている美都に、
「もう少しだけ、俺と一緒にいてくれない?」

成孔が聞いてきた。

「けど、お仕事中じゃ…」

「3分…いや、1分でキリをつけるから待ってて」

成孔はパソコンと向きあうと、カチャカチャとキーボードをたたいた。

「はい、終わり」

成孔はそう言うと、パソコンを閉じた。

(本当に1分でキリをつけちゃった…)

宣言通りにキリをつけた成孔に、美都は目を丸くすることしかできなかった。

「それじゃあ、行こうか」

「あ、はい…」

成孔に手を繋がれてしまった以上、逃げることは無理だと美都は思った。