「はい」

美都が返事をすると、
「何歳になった?」

成孔が聞いてきた。

「27です」

美都がその質問に答えると、
「そっか、もう大人だね」

成孔はそう言ったのだった。

「まだ子供に見えるんですか?」

そう言った彼の言葉の意味がわからなくて、美都は聞き返した。

「美都ちゃんはすっかり大人だよ」

成孔は首を横に振って美都の質問に答えた。

「ああ、でも“ちゃん”はないか…」

成孔はそう呟くと、
「今から君のことを“美都”って呼んでいい?

もう子供じゃないから、そう呼んでもいいかな?」
と、聞いてきた。

兄と父親以外の男から自分の名前を呼ばれるのは初めてだった。

「やっぱり、ダメか…」

自嘲気味に成孔が呟いた時、
「…いいですよ」

美都は言った。