買い物を済まして公園の横を通るとまだその男の子はいた。

不思議に思い。

目が離せない。

1歩また1歩とその子に近づいていく。

男の子がこっちに気付き振り向き微笑んだ。

その笑顔に一瞬言葉を失った。


今考えてみるときっとあの時が好きになった瞬間で私にとっての初恋だったんだと思う。


「綺麗な傘だね」

思い切って声をかけてみた。

「ありがと。君も綺麗なレインコートだね。」

「でしょ?雨が嫌いな私のためにお母さんが買ってくれたの」

「優しいお母さんなんだね。海みたいで綺麗だね。」

「あなたのも紫陽花みたいで綺麗ね。」

男の子が笑った。

「なんで笑うの?」

「雨は嫌いなのに紫陽花は好きなんだね」

「雨と紫陽花は関係ないでしょ?」

さらに男の子が笑った。

「なんで笑うの??」

「こっちおいで」

男の子が背を向け静かに歩き出した。

その後ろを慌ててついて行く。

公園の逆の道に初めて出た。

近所なのに全く違う景色。

雨のせいもあって少しどんよりして少しだけ怖くなった。

男の子の服の裾をつかむ。

「どうしたの?」

「少し怖い」

「なんで?綺麗なもの見せてあげるから少し我慢して」

「綺麗なもの?」

そういうと男の子はゆっくり歩き始めた。

裾を掴みながらついて行く。