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 幸か不幸か企画書が通ってしまったお蔭で、見事にイブ出勤している俺。月曜には本格始動するため資料を用意すべく、書類を作成したりとあくせく働いていた。

 勿論、二人で――

「鎌田課長、こんな感じでいいですか?」

「……却下、やり直しして下さい」

「だーっ、これで3回目じゃないですか。具体的にどこが駄目か、丁寧に教えて下さいっ」

 俺は鎌田課長の机を使って書類をバシバシ叩きながら、悔しさをアピールしまくった。
 ↑やってること、お子様だな

 鎌田課長は、深くため息をついて俺の顔を仰ぎ見る。

「君の作った書類で皆が動くんです。自分だけが分かる文章を書いていたら、どうなりますか?」

「そこは皆の想像力で悟って欲しいです……。んもぅ今からチマチマやってたら、絶対に間に合わない」

「焦っても、しょうがないでしょう。どうせフラれるんだから」

「部下の心をザックリ傷つける上司。パワハラだ、パワハラ!」

 俺が抗議すると、机に頬杖をついて呆れた顔をする。

「文句言う暇があるのなら、さっさとやっつけたらどうです。俺だって、好きで君の仕事を手伝っているワケじゃないんです。今日はクリスマスイブ、君だけ特別じゃないんですよ」

「すみません、仕事してきます……」

 鎌田課長にも、きっと約束があったんだろう。当然、嫌みの一つや二つくらいは言いたくなるよな。しかも上司として、部下の成長を考えているんだろう。正解を自分で出させる仕事をさせる。

 でも今日は年に一度のイベントなんだから、お互いの幸せのために仲良く手を取り合ってやっつければ、夕方までにはきっと終わるのに――

 どうして頭が堅いんだ、コノヤロー。

 恨めしく思いながら前方にいる鎌田課長を見ると、鮮やかにサクサク仕事をこなしていた。

 悔しいが見習うしかない。少しでも早く仕事を終わらせて、亜理砂さんとイブを過ごそう。

 焦る気持ちが見事に空回りしてこの後何度もやり直しをさせられることを、このときは思ってもみなかった。