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「彼女の男性遍歴って、イケメンに限るをそのまま実行しちゃってるタイプのコなんだ」

 実はとあるレストランで彼女が来る前に、山田さんと軽くミーティングをしていた。

「ふーん。写メ見るだけだと、そんな風に見えないのに」

「なぜだか彼女が付き合った男性って、問題児ばかりでね。トラブルの相談にのってたんだ。そこで小野寺くんにお願いがある!」

「鎌田課長が恋愛成就した暁には、俺に彼女を紹介して、めでたしめでたしだったのでは?」

 汚れ役をやったのは、可愛い彼女を紹介してもらうためだったんだぞ(これのせいで読者から間違いなく前半嫌われたに違いない!)

 むくれながら、テーブルに頬杖をついた。

「小野寺くんの培った恋愛経験で、彼女を幸せにしてほしいんだよ」

「俺、イケメンじゃないですけど、彼女のためなら心と肉体の両方を幸せにしますよ」

 ニッコリとほほ笑んで、左手親指を立てる。

 イケメン好きな彼女に好きになってもらうのには、苦労が目に見えるけどね。

「小野寺くんなら大丈夫だよ。俺よりも十分にイケメンだから」

「鎌田課長の美貌には負けますけどね……」

「あはは、それは言わないで。天地の差だから」

 お互い目を合わせて苦笑いした。

「彼女の家庭環境も複雑でね、特に父親との折り合いが悪いらしい。だから父親が経営する会社に入ってないんだ」

「ふーん」

「うちの取引先の海外事業部勤務でエースと言われるくらい、彼女は仕事ができるんだ。だから社内の男連中は、彼女に声をかけにくいみたいなんだよね」

「俺、平に毛が生えたようなポジションなのに、大丈夫だろうか……」

 イケメンじゃないし、背だってそんなに高い方じゃない。

「大丈夫だよ。まさやんがやってた仕事を、上手くまわしてるって聞いてるよ。まさやんと違って融通利くしコミュニケーション能力が高いから、どんな人とでもトラブルなくやってるって評判高いんだから」

 一体その評判は、どこから聞いているのだろう? 山田さん恐るべし。

 だけど山田さんからもたらされた彼女の情報を元に、俺のサクセスストーリーが決まった。

 絶対に出世してやる!

 鎌田課長の前ポストをそつなくこなしつつ企画書をバンバン提出して、デキる男をアピールしてみせようじゃないか。

 しかしデメリットもある。仕事をバリバリするには、休日を使ってやらなきゃならないときもあるだろう。

 3ヶ月というタイムリミットがあるんだから、上手い具合に時間調整して彼女に逢わなければなるまい。両方頑張ってみせなきゃならないな――。