家の最寄駅に到着して、降りた。
大志くんに自宅まで送り届けてもらうのはもうこれで3度目になる。
となりを見ると、大志くんは夜空を見ていた。だから私も上を向いた。それに気づいた大志くんが止まる。
「また柱にぶつかんぞ」
「大丈夫だもん」
手、繋いでいるから。ぶつかったりしないで、真っ直ぐに歩ける。いまだけは、大志くんが守ってくれるから。
そういった意味をこめた"大丈夫"だった。伝わったのかわからないけれど、大志くんは困った顔で笑った。
今日、花火、全然見られなかった。
時間が経って今日を思い出すとき、花火よりもきっと、この星空のことを覚えているような気がする。
「大志くん絶対今日のこと後悔するよ」
「……うん」
「私のこと、好きならずっと捕まえててよ」
冗談ぽく、言ったつもり。本音で間違いなかったけれど。
友だちのままでいいなんて、私にはどうしても思えない。
好きだから、好きな人の特別な人になりたいし、友だち同士じゃできないことって、たくさんある。
友だち同士じゃデートなんてしないけど、恋人だったらなんの違和感もなくするでしょう?
手を繋いで、思い出つくって、なにげない毎日を重ねていく。
楽しくない毎日の学校だって、好きな人がそばにいれば頑張れると思う。好きな人に会いたくて、毎日の早起きだって、できると思う。
いままでひとりでこなして来たことを、好きな人が支えてくれるだけで、何倍にも頑張れる。



