俺がこんなに好きなのは、お前だけ。



──ヒューー、ドドン!ドン!


花火が夜空に咲いた。身体の芯にまで響く爆音と、煌びやかな火花。大志くんの背後に儚げに打ち上げられている。



「帰ろう」

「…………」

「家まで送るから」



頷いた。手を出してくれたから、素直に甘えてその手を握った。今日だけかもしれない。ううん、絶対に今日だけだ。手を、繋いでくれるのは。


幸せだった。生まれて初めて好きな人ができて。
これまで生きてきて感じたことのない喜びだった。


好きな人がいるだけで世界はカラフルに彩ったし、好きな人が優しくしてくれるだけで嬉しくて、なにげない小さな仕草にもドキドキした。


想像もしていなかったんだ。
まさかこんなに切ない恋になるなんて。


好きだって言って、正解だったのかな。

好きだって言われたのに、どうしてこんなにズキズキ痛いの?


花火が打ち上がっていて、周りの人たちは上を見ているのに、私はしたばかりを見ていた。自分の影が花火が上がるたびに浮き彫りになった。


ふたりの間に、会話はない。
時々となりを見るけど、大志くんの顔も暗い。
目が合えば微笑まれるけれど、それもなんだか痛々しい。


泣いちゃったから、化粧も崩れて顔、悲惨なんだろうなぁ……。


電車に乗った。それでも繋がれた手は離されない。このままずっと、離したくない。離され、たくない。


気を抜いたらまた、泣きそうになる。


もうなにも考えられない。