俺がこんなに好きなのは、お前だけ。




手を引かれて人混みから抜ける。屋台裏にある、ちょっとした芝生のスペース。街灯もないので、薄暗い。離れたところにあるお祭りの灯りと月明かりだけが世界を照らそうと頑張っている。


手が、離された。向かい合う。



「ごめん。話し折れたな……」

「ううん」

「俺、お前のことが好きなんだと思う」

「うん」

「でも、自信持てないんだ……」



いつになく、弱々しい声。
手を伸ばして抱きしめたいと思うのに、しちゃいけない。


だって私たちはまだ"友だち"だから。



「中途半端な気持ちでお前を傷つけたくない」

「うん」

「ごめん」



なにが"ごめん"なんだろう。なにに対して大志くんは謝罪しているのだろう。


自分の気持ちがわからなくて中途半端だって、それは私のこと真剣に考えてくれているってことだよね?


──もしかして、いま、私って、振られている?



「俺は友だちでいたい」

「…………」



目をそらさない。生ぬるい風が吹く。足元に目線を落とした。慣れない下駄でたくさん歩いたから、足が痛い。でもそれ以上に心が、胸が、痛い。


気を抜いたら、泣きそう。



「私、生まれて初めて誰かを好きになったんだよ」

「うん」

「諦めるなんて、できないよ……」



我慢しているけど、無理だ。もう溢れる。視界がぼやけてきた。



「ごめん。俺にできるのは、お前と関わらないようにすることだけだ……」