俺がこんなに好きなのは、お前だけ。



でも、わかりたい。



「……大丈夫?」



握られている手首。彼の手の上に自分の手を重ねた。ビクッと、彼の身体が跳ねて、目が合う。そして「はぁ〜〜」と深いため息を吐く、というよりは気が抜けたようにへたり込む。



「だっせぇ……俺……」

「……?」

「余裕なさすぎ。最近お前が近くにいると、変になる」



頭を抱えて、地面を見つめる大志くん。私も遅れてしゃがみ込み、大志くんと目線を合わせる。



「それって、どういうこと?」

「……っ……」



膝に置いた腕で隠すように半分ほど顔を埋める彼。私は首を傾けて返事を待つ。


遠くではお祭りを楽しむ人たちの声や、音が鳴っている。お店からは煙が立ち上がっていた。


だけどここはすこしそこから離れているからか、静かで、近くに誰もいないし、実質ふたりきり。


このむず痒いような雰囲気にのまれそう。ドキドキで、意識が吹っ飛びそうになる。



「……わっかんねぇよ、んなこと」

「どうして?」

「自分でもよく、わかんねぇんだ……ほんと……」



そして、顔が隠れる。握られている手を見て、反対の手の中にいる大志くんの表情が知りたいと、素直に思った。



「お前といると、調子が狂うんだよ」

「うん……」

「隙がありすぎんだ。だから男がお前をほっとかねぇ」

「うん、ごめん……」



なんで謝っているのか、正直わからない。けれど、拗ねているようにも見える大志くんが愛らしくてたまらない。


私のなかにある好きのアンテナをくすぐられる。




くぐもっている声さえ、じれったい。



「お前が悪い……」

「うん、そうだね」

「こんなの、俺じゃない……」

「うん……」



理由が知りたい。

どうして調子が狂うの?
どうして私に隙があるとダメなの?


ねぇ、教えてよ。



「お前こと、好きになりたくねぇのに……」

「うん」

「恋なんか、したくない」

「うん」



もう、ダメだ。なんなんだこの人。可愛すぎる。私のこと、こんなに虜にして、どうしたいんだ。


好きになりたくない、恋をしたくないって、それってさ、自分に言い聞かせているだけで、逆の感情を抱いていますって宣言しているのと同じだって、気づいていないのかな?