俺がこんなに好きなのは、お前だけ。




「……お前ら、なにやってんの」



そして、低い声が私たちのもとへ届いた。割って入って来たのは、大志くんだった。彼の表情に、笑みはない。


目尻も垂れてなく、口角も上がっていない、無表情。



「べつに。佐野には関係ないじゃん」

「あ?」



大志くんの様子がおかしい。クラスメイトにこんな態度。変だ。完全に顔がキレている。イライラしたオーラがひしひしと伝わってくる。



「……気安くこいつに触んな」



クラスメイトの男の子の手を払いのけた大志くん。空いた私の手を、今度は大志くんが掴む。


みんなの視線が痛い。だけどそんなことはお構いなしに、大志くんが「行くぞ」と、私の手を引いて歩きだした。


どんどん進んでいく身体。おぼつかない足取りで、転ばないようにするのがやっと。



「ねぇ、大志くん……っ」

「…………」

「大志くんってば……っ!」



必死に呼んでも、大志くんは応えない。
握っている手にチカラがこもっている。若干痛い。


ゆっくり歩くお祭りを楽しむ人たちのなかを早足で通り過ぎていく。さっき、バランスを崩した際に手に持っていたりんご飴を落としてしまった。


しばらく歩いて、出店もない路地まで出た。
あんなに明るかった道。街灯や自販機の照明だけの明るさが頼りの路地は寂しく感じる。


歩みを止めた大志くん。だけど、私の手は離さない。


わかんない。大志くんが考えていることが、全然わからない。