俺がこんなに好きなのは、お前だけ。



ふたりが並んで歩き出したあと、後ろをついて行くように歩いた。
ほかのクラスメイトとも再び合流して、固まって歩く。


煌びやかな飾り。提灯は赤く光り連なり、夜空によく映える。歩くスピードは女子たちに合わせられているのか、至極緩やかだ。


出店をいくつかまわった。大志くんのことを狙っていると言っていたクラスメイトの子は、ずっと大志くんのとなりをキープしていて、私が入り込むスペースなんてまるでない。


時々それぞれのスマホでSNS映えした写真を撮りながら、私は手にしていたりんご飴を舐める。



「ねぇ、小田さんってさあ、佐野と付き合ってんじゃないの?」

「え?」



突然私の横に並んだクラスメイトの男子の言葉に心臓が跳ね上がる。


ど、どうしてそんなことに……?



「いいの?目の前で浮気されてっけど」

「いや、そもそも付き合ってないから……」

「え、そうなの?」

「うん。そうだよ」



驚いたように目を見張らせた彼が「なんだ、そうか」と妙に納得したような表情を見せた。



「じゃあ俺が小田さんのこと狙ってもいいってわけだ」

「へっ?」



思いもよらない台詞に、声がどこかへ飛んだ。歩いていた足を止める。
暑さと、人混みの熱気に後押しされて、頭も真っ白になる。



「いま俺らふたり消えてもバレないんじゃね?」

「ええっと……」

「行こう」



手を差し出され、返答に困る。
なんて言って断わればいいのか、わからない。

その間にもみんながどんどん前に進んでいく。置いていかれてしまう。


そう、焦りをつのらせていたとき、痺れを切らしたクラスメイトの彼が私の手首を掴んだ。