大志くんに恋をした時点で負けは確定している。
この恋はどうやったって、成就しない。
好かれないのだから、嫌われないようにするしかないのだ。
それでも愛されたいと願わずにはいられないし、好きになってもらいたいという欲求がないわけじゃない。好きなのだから、そんなの当たり前にある感情だ。
いかに隠し通すかが、この恋を長持ちさせる鍵なんじゃないかと、勝手に思っている。
失恋したくない。たとえ、永遠に片想いでも……。
振られるぐらいなら、告白なんてしないし。友だちって思ってくれているなら、それでいい。
「あとさ、噂で聞いたんだけど……」
「ん?」
「図書室でももちゃんのこと庇って、大志くんが隣のクラスの佐藤くんにすごい形相で怒ってたって、噂になってるよ」
「えっ」
……知らなかった。
言葉を失って「なにがあったの?大志くん、温厚な人なのに、怒るなんて只事じゃないよね?」と続ける目の前の彼女になにも言うことができない。
噂に……なってるんだ。
大丈夫かな。大志くんのこと、困らせてはいないだろうか。
私のせいで、大志くんのイメージが下がったり、変な噂になっちゃうのは、本当に避けたい。
「なにしてるの?」
ふと私たちの間に入ってきたのは、まさに話題の張本人である大志くんであった。
驚いていると「行こう?」と王子様スマイルを見せつけた。それに目がハートになったクラスメイトが「うんっ」と声も高くなる。



