俺がこんなに好きなのは、お前だけ。



肩で息をして、乱れた呼吸を整える。


絶対に変なやつだって思われた。最悪だ。いきなり飛んできて"さようなら"はないだろ、どう考えたって。


うずくまって、膝に顔を埋める。頭上では、蝉の鳴き声がうるさい。木のおかげで日差しは遮られているが、走ったからか暑い。汗がにじむ。


さっき見たみんなの顔が何度もリフレインする。後悔で涙が溢れそうになった、そのときだった。



「おい」



低い声が降ってきた。
その声の主がわかって、身体が硬直する。顔をあげられない。いま私、すごい顔していると思うから。見られたくない。



「なにしてんだよ」

「……べつに」



可愛くない返答をしてしまった。
膝に顔をうずめているからから声がこもる。



「なんで追いかけてきたんですか」

「なんでそんなに不機嫌なんだよ。つかなんで敬語?」

「……ほっといてください」



反抗期の娘みたいな反応しかできない。


──ジャリ……。


靴と地面の砂が擦れる音。大志くんが私に一歩、また一歩と近づいてきているのがわかる。そして、すぐそばで止まったことに気づく。


遠くのグランドでは運動部がウォーミングアップを始めたようで、息のそろった掛け声が響いている。校舎内ではブラスバンドのチューニングを合わせる音がひしめき合っている。


どれもがすぐ近くから聞こえているはずなのに、私たちがいるこの空間だけ浮いたように、少しだけエコーがかかったように耳にこだましている。