涙目になりながら睨むと「怒んなって」とまた歩き出した大志くん。
怒りたくもなるよ……。
だって、好きになんなって言っておきながら……こんなの……。
「……っ……」
唇を噛んで置いていかれないように走る。
大丈夫。私は大志くんを好きにならない。大志くんに、恋なんてしない。
「私、大志くん嫌いだもん」
「……この前と言ってること違くね?」
「意地悪な大志くんは嫌い」
「あっそ」
そうだよ。自分の感情ぐらい、自分でコントロールできるよ。高校生だよ。子供だとしても、もうかなり大人に近づいているんだから。
駅に到着した。定期を改札にかざして、隙間を通る。振り返ると、ポケットに手を突っ込んだまま立っている大志くんがいる。
私は笑って「じゃあね」と手を振った。そしたら彼も軽く手をあげて「早く行け」とぶっきらぼうな口ぶり。
もう一度後ろを見ると、大志くんはその場を動かずに私のことを見ていた。
……天邪鬼な人。
鼻から大きく息を放出して、私は、駅のホームに向かった。
帰宅途中もその後も、お風呂に入って夜ご飯を食べて、ベッドに横たわっても、大志くんの笑う顔が頭から離れなかった。
眠りにつく、その一瞬まで。
目覚めてから顔を洗ってふと鏡に映る自分を見たとき、昨日の朝から放課後までの流れを思い出している自分に気づいた。



