この流れはなに?
もしかして……恋のはじまりですか?
佐藤くんは特にイケメンというわけではない。二重で目がキリッとしているけれど、彫りが深く、見た目からもとても男らしい人。
その後も会話は途切れることなく続いた。それぞれの担任の話や、クラスで起きた面白いエピソードを話し合って笑って過ごした。
カフェを出るとき、ケーキ代は無料だったのだけれど、自分が飲んだキャラメル代は払おうと財布を取り出すと「いいよ、ここは」と佐藤くんがささっと払ってしまった。
悪いからと、お金を差し出しても受け取ってくれず、「俺が誘ったから」とその一点張り。
「じゃあさ」
「……?」
「次、なにかの機会があったときは小田さんに奢ってもらおうかな?」
帰り道、頬を膨らませた私を見て、佐藤くんが両方の目尻を下げながらそう言った。
私たちに"次"があるの?
「わかった」
ちょうど、乗る駅に到着して、私は頷いた。
そのままふたり並んで中に入って行くかと思いきや、となりにいると思い込んでいた佐藤くんがいなくて、立ち止まる。
「じゃあまた、学校でな」
「え?佐藤くん乗らないの?」
「ああ、俺電車じゃなくてバスなんだ」
目を見開いた。
嘘、佐藤くんも電車だから一緒に歩いてたんだと思ってた。
まさか、わざわざ駅まで送ってくれたってこと……?
「じゃあな」
「うん、また明日!」
手を振る佐藤くんに私も手を振って応えた。
改札を抜けると、電車に乗り込んで、私は佐藤くんのことを考えた。
優しい人だった……。



