俺がこんなに好きなのは、お前だけ。



健康的な小麦色の肌。筋肉質な腕に男の子を感じる。
うちのクラスの意地悪な偽り優等生くんとは違う。
あの人は正反対に色白で、ひょろひょろとしていて、チカラなんてまるでなさそう。



「……小田さん?」

「へっ?」

「いや、ぼうっとしてたから。……ごめんね、俺前見てなかったから。怪我してない?」

「いや全然! むしろ私のほうがごめん!」



申し訳ないと真摯に謝る彼に私も戸惑いながら謝罪した。

前方不注意は、私も同罪だ。



「小田さんは買い物?」

「うん」

「そっか……。あ!あの、小田さんって甘いもの好き?よかったらこれ食べない?」

「え?」



思い出したかのように差し出されたのは本屋さんの横にあるカフェのケーキの無料券だった。
甘いものに目がない私。思わずごくりと喉を鳴らしてしまった。



「い、いいの?」

「うん。さっき買い物したらもらったんだ。よかったら今から一緒に行かない?俺はコーヒーが飲みたいんだ。ケーキは小田さんが食べて」

「えっ、うん!ぜひ!」



舞い上がって即答。ついつい浮かれて返事が大きくなる。


でも、佐藤くんと話すのはこれが初めてで、接点もまるでないのに、いきなりカフェでふたりきりって、うまく会話できるだろうか?


急に不安になってきた。



「ここのコーヒーもケーキも美味しいって聞いたからさ、楽しみだなぁ」



隣で嬉しそうに笑う佐藤くんを見て、私も笑った。
まあ、どうにかなるでしょう。


雑誌をレジで会計して、ふたりで本屋さんを出てカフェに入った。


そのカフェは白と黒を基調としたテーブルや椅子で揃えられており、店内は落ち着いたBGMが流れていて、とても大人っぽい雰囲気。とてもSNS映えしそうな感じだ。