佐野大志のハートを射止めた女の子は、一体どんな子だったんだろう。
片想い?両想い?付き合ってた?別れたの?いま、その子とはどんな関係?
聞きたい。教えてほしい。
恋が嫌いな佐野大志が、どんな恋をしていたのか。
恋をしたことない私に、恋に憧れる私に、ぜひとも。
だけど、まあ当然、聞けるわけがない。私たちはいま、劣悪な関係なのだから。
「あっ……」
「あ、」
私の声とその声がかぶったのは、放課後のことだった。
本屋さんにいつも買っている雑誌を買いに来たのだけれど、たまには一般文芸のコーナーも見てみようと視線をなにげなく本棚に向けていたときだ。
大嫌いな佐野大志と鉢合わせたのは。
突然目の前に現れた背の高い佐野大志に心臓が跳ね上がる。ぶつかるかと思った。
「……なんでいんのよ?」
「なんでもいいだろ。そっちこそなんでいんだよ?」
「べつに、なんでもいいでしょ?」
佐野大志の横を通り抜けようとしたとき、同じ方向に足を踏み出した佐野大志とぶつかりそうになる。
次に反対方向に私が進む。でも、同じように佐野大志が私の行く手を阻む。
「ちょっと……!」
「お前、ふざけんな、わざとかよ?」
「そんなわけないでしょ……っ」
「どーだか。性格悪いしな」
「はー?」
小馬鹿にしたようなその態度にハラワタが煮えくり返る。
ほんっと、失礼な人。
ふと佐野大志が私が持つ雑誌に目を落とす。
「……本読めよ」
「いーじゃん、雑誌でも」
「恋占い特集って、まだ恋したいとか思ってんの?」
「悪い?」



