「…………」



部屋の天井を見つめて、胸の奥が切なく痛むのを感じた。


焦る。だって普通、初恋が高校生にもなってまだだなんて、そんなの遅すぎる。


このまま一生誰にも恋しないまま人生が終わっちゃったらどうしよう。それだけは絶対に嫌だ。


考えることを無理やり中断させるように部屋の明かりを消した。


まぶたを閉じて睡眠の世界へと入っていった。



***



次の日の朝、大粒の雨が降っていた。傘をさして自宅近くの駅まで歩き、電車に乗って、学校の最寄り駅で下車してまた歩いた。


眠くてあくびをすると、目尻に涙がたまった。まばたきをすると流れてしまいそうになった雫を、指ですくった。


好きな人がいれば、毎日の学校も、楽しみになるのかなぁ……。


濡れた地面のコンクリートのデコボコを流し見ながら、そんなことを考えた。



「ももか、おはよう」



たどり着いた学校。教室に入ってすぐ結衣羽が笑顔で声をかけてくれた。
私も自然と笑顔になって「おはよ」と返事をしながら席に着く。


かばんの中身を引き出しに移し替えながら、教室のなかを何気なく見渡した。


すぐ近くでは仲良しカップルでお馴染みのクラスメイトの男女ふたりが仲睦まじく談笑しているのが目に入り、


目を背けた先の廊下では、うちのクラスの男子ととなりのクラスの女子が楽しそうに話している姿もある。もうすぐカップルになりそうな、そんな感じ。とても、羨ましい。



「……ねえ、私の運命の人どこですかぁー?」

「うわ、でた。今日は一段と早いですね、その口ぐせ」

「だってぇ……」

「はいはい、もう聞き飽きたから」



ひどい。せめて言わせてくれたっていいじゃないか。