「別れよう」

「え?」



放課後、ふたりで並んで帰っていたとき、美夜が突然そう切り出した。
最近顔が暗くて、今日もとなりを歩いていても上の空で、思いつめたような表情をしていた。
心配していた矢先の出来事だった。



「なんで……?」

「うん、なんか、想像と違ったんだよね」

「…………」

「最近大志への気持ちも冷めちゃってさ……」



ズサ、ズサ。心がナイフに刺される。痛い。


……だからなのか?

だから最近お前は思いつめたような顔をしていたのか?
お前を悩ませていたのは俺?


──「冷めちゃってさ……」


んだよ、それ。ふざけんな。お前だけは、ほかのやつらとは違うってそう信じていたのに。


そんな簡単に裏切るのかよ……。

所詮、お前も周りの女子たちと同じってことか。



「……わかった」

「え?」

「もう二度と俺に喋りかけんな」



美夜を置いて、その場を早歩きで去った。俺たちが別れたのは中学3年生の春だった。


もう、恋はしない。やっぱり恋なんて──大嫌いだ。恋愛感情なんて信用できない。


本気で恋なんて……できないんだ。誰も。俺も。


俺、美夜のこと好きなんだと思ってた。だから、大事にしようと思ってたんだ。


だけど、違った。冷めたって言われて、俺の心まで冷めた。


俺も、周りの女たちと一緒なことに気づいた。振られたからって、美夜のことを嫌いになった。近づくなとまで宣言してしまった。


まじでダッセェ。ダサすぎる。


永遠なんてない。
誰かひとりのことを、ずっと好きでいることなんて、無理なんだ。