それは友だちとしてではなく、恋人として。
手を繋いで、キスをして、ハグをして、されたい。
悲しいことがあったら、となりにいてくれるだけでいい。


なにかに失敗したら、その大きな手で優しく頭を撫でて、慰めてほしい。


ただ、同じ空間にいるだけでいい。そばにいてほしい。


願いは、こんなにもいっぱいある。
だけど、そのどれもが手の届かないところにある。


叶えてほしいのは、他の誰でもない。ただ、この世界にひとりだけ。


君だけなんだよ、大志くん。


他の人じゃ、意味ないの。他の人とじゃ、もう恋なんてできないよ。


だから……ねぇ、お願い。
私に、本気の恋をしてほしい。



「……はっ……」



吐き出した息。嗚咽は、リビングに母がいるので我慢した。


わがまますぎる願いは、きっと叶わないことを私は知っている。
だけど心が叫んでしょうがない。


もう止められない。戻れないんだもの。


恋をしていない私になんて。



***



いつの間にか寝落ちていた私は夜中に目が覚めた。制服を脱いで朝早めに起きてシャワーを浴びようと、再び眠りについた。


朝目覚めると、目がすこし腫れていた。泣いて、何度も目をこすったからだ。



「最悪だぁ……」