「――で、具体的には何をするんだ?」


西園寺をオトす発言をした私を、真琴が訝し気な目で見てくる。

私は今しがた使ったばかりの鏡を手に持ったまま、フフンと鼻を鳴らした。


「オトす」


「どうやって?」


「ありとあらゆるテクニックを使って」


「テクニック…」


信じられないとでも言わんばかりの顔をしている真琴に、私はにっこりと微笑みかけた。
これぞエンジェルスマイルである。自称ではない。男子生徒たちが名付けたものだ。

私は一つ咳払いをし、王子こと西園寺が去った方へと視線を投げた。


「これまで私に落ちなかった男はいなかったんだから。アイツもオトしてみせるわ」


「が、頑張りたまえよ…」


私はどこぞのマダムのように高笑いをした後、自分の席にお上品に座った。そして、続々と登校してくる男子生徒達に笑顔で挨拶をしながら、SNSを開く。


【今日はいい天気!イイコトあるかなぁ】


そう呟いた後、アイツを落とすための策を練り始めた。