* * *



「―――ん?」


「アオ、どうした?」


六限が始まる五分前。

廊下で親友と談笑していた学園王子こと西園寺は、ポケットの中で振動したスマホを取り出した。

画面には、【新着メッセージ 一件】と映っている。


「…珍しい。アオがチャットしてる」


「そうかな?」


「そうじゃん。メッセージチャット面倒くさいから、用があるなら電話してきてって言うし…」


「はは、ごめんね」


ぶつぶつと不満を口にする親友・透真に相槌を打ちながら、アプリを開けば――。


「……並木さん…?」


「は? 並木?」


送られてきたものはメッセージではなく、喜怒哀楽を絵で伝えることが出来るスタンプだった。


「……ぶっ、あははっ…!」


それを見るなりお腹を抱えながら笑い出した王子を見て、透真は怪訝そうに画面を覗き込んだ。

そして、固まる。


「………ゴリラ?」


「だよねっ。並木さん、最高っ…!」




(―――並木さん?)


大爆笑をしている王子の口から、美女として名高い女の名を【西園寺葵依ファンクラブ】の女たちはしかと聞いていたのだった。