天使の扉

結局部活は筋トレで終わった。
明日には全身筋肉痛になるのが今からわかるくらいきつかった。

家に帰ってバッグを放り出してベッドに倒れこんだ。

「きつかった~!!」

母から声がかかる。
「ごはんよ~」
「は~い」

綾音は食卓へと向かった。
父も帰ってきていた。

「ねぇ、お父さん、いつからコートでプレイできるの?」
「…まぁ、素振りの練習が2学期からだからプレイはそれからだな」
「えええ~」
何だか気が遠くなる話しに聞こえた。

ご飯を食べながら玲奈との会話を思い出していた。

それは、部活が終わって着換えているときだった。
「ねねね。サッカー部の遠野先輩かっこいいよねぇ」
「遠野先輩?」
綾音にはそれが誰だか分からなかった。
「そうなんだ」
「うん、もう見ただけで胸がときめいてどきどきするから恋に落ちたかも」
「…恋?」
「うん」

恋をするとどきどきするんだ…綾音は男の子を好きになったことがないから初めて知った。

…私もお父さんにどきどきしてる…
これも、恋?
今まで感じた事のない父へのときめき。心拍数が速くなる。

考えてみたらかをりだったときに父を見てどきどきしていた。そしてわくわくもしていた。

その感情とリンクしている気がした。

私、お父さんに恋してるの?

今まではそんなことはない。こんなおじさんに。そう思っていた。


ちらりと父を見た。
父が気付く。
「なんだ?」

真っ赤になって綾音は慌てて答える。

「ううん!なんでもないよ!」

綾音が誤魔化すようにお米をかきこんだ。



…どうしよう、お父さんと会話すると緊張する…
今までこんなことなかったのに…

かをりの影響だろうか?
でも彼は父だ。

正反対の意識が戦っている気分だった。