家に戻って少しすると、




普段静かな携帯が突然震えた。







雨音「はい」



恭弥『…俺』







電話番号も削除してたし、



一ノ瀬恭弥なんて、画面に表示されなかったから




思いっきり油断して出てしまった。






電話の向こうから聞こえてきた声に、



少し手が震える。






雨音「…な、に」


恭弥『……今日だけ、来てくんないかな。


まだ辞めるって言ってねえだろ。


……人が、足りなくて』






人が足りないからって




浮気して捨てた女に助けを求めるなんて





どんな神経してんだって思ったけど…





雨音「いいよ別に。暇だし。」


恭弥『まじ?!助かる。じゃあ待ってるな』






こういう時だけ都合よく使われてるのは



私だって自覚済みだ。










―カランカラン





雨音「恭……あっ、」


恭弥「お!雨音悪いな、制服ロッカーに入れたままだからすぐ着替えて」






店に入ると同時に飛び込んできた光景。




人が足りないと言ってた割に例の女の人と楽しそうに話す恭弥。





雨音「…いつもご利用ありがとうございます」


??「あ、ご丁寧にありがとうございます。


雨音さんっていうの?素敵なお名前ね」


雨音「……どうも…」


恭弥「薫さん、さっきの話の続き____」





薫さんと呼ばれた人が恭弥に視線を移したのを見て




私もおもむろに更衣室へ向かった。