「主任……どうする?」

今オレは……相当悩んでる。

何で今回の出し物が手品??

何故……水を使った?

言っても仕方のない愚痴が……心を占める。


事の発端は、9月の誕生日会。

30の大台にのってしまうオレは…正直どうでも良かった。

別に祝われて嬉しい歳でもないし。

画用紙を取りに倉庫に入ると先約の彼女が中でノートを見ていた。

どうやら…彼女が今回の教師のプレゼントを作るらしい。

そういえば、年長の由香先生が

「今年は先生…30歳ですよね。
最高のペンダントをプレゼントしますね!」と笑ってた。

由香先生が作ると思っていたが…

多分、由香先生もオレが彼女を好きだと気づいているらしい。



「先生がオレのペンダントを作ってくれるんだぁ。
楽しみにしてるよ!」とさりげなく言ったが…

ホントは相当楽しみにしてる。

同じ月の生まれの主任も

「可愛い唯先生が…かなり力を入れて作ってくれてるらしいですよ!」と

いつになくはしゃいでた。

当日は

担当の彼女が…テーブルにキチンと準備して音楽を流し

滞りなく進んでいた。

子供たちも身近な友達が、壇上に立ってインタビューに答えるのはワクワクするようだ。

歌にダンス、紙芝居と…

楽しい時間はドンドン過ぎていき

次はいよいよ手品となった。

密かに練習を重ねた教師の手品は…素人なのに十分楽しめ

子供たちの歓声が響いていた。

ただ……

最後の大掛かりな手品で、事件が起きた……。

緊張のあまり手を滑らせたのは…水の入ったコップ。

よりによって…ペンダントの上にこぼれてしまった。

遠くから見ると分からないが…

せっかく書いた文字は滲んで読むことが出来ない。

無事に誕生日会は終わったが……

なんとも後味の悪い会になってしまった。