「もしかして泣いたりした?目、赤いよ。なんで泣いたの?」


さっきとはうってかわってキョトンとした顔の輝に、イラっと来る。
空気読めないところはほんと昔から変わらないよね…!

後輩君が、マドンナから連絡が来たのか、生徒会室を飛び出して行ったから、私も、

“いい加減認めないと、ほんとに誰かに取られちゃいますよ”

我慢せずにぶちまけた。




「お前のせいだよバカ!輝がマドンナに片想いしてるの知ってるんだからね!好きな人が片想いしてる人からチョコ貰った現場目撃して平気なわけないじゃん!」



文法もぐっしゃぐしゃでありったけの想いを伝えると、輝は少しの間考え込んで、意味がわかると顔を真っ赤にした。


「結局は私の勘違いだったけど、マドンナが輝のこと好きなんだと思って!付き合うのかなとか、私どうしたらいいんだろうとか、輝とマドンナが付き合うことになったら、笑顔で“おめでと”って言えるのかなとか、沢山考えてそれで_」


早口言葉のようにとてつもない速度で言葉を散らかしていたら、最後まで言い終わる前に輝のごつごつした男らしい手で口を塞がれた。

「ストップ、ストップ」と言いながら、輝は耳まで真っ赤にさせて照れ始める。


私も、口を塞がれて少し冷静になると、自分が告白紛いのことをしてることに気が付き、穴を掘って入りたい気分。



「あー、のさ、俺がマナさんに片想いしてたの、小学生の時の話だよ…?それも片想いって言うか、俺がいじめられて泣いてた時に声かけてもらってさ、恩義を感じてただけって言うか、うん…マナさんのことは別に好きじゃないよ…」


輝は、アハハハーとしけた笑いをしながら、相変わらず赤面したまま私から目を反らした。


私は、当時、転校生だった輝が周りに馴染めず、男子達からいじめられていたことを思い出す。
そういや、輝って転校してきたんだった。
ずっと昔から一緒にいたイメージだったけど、実際は三年生の二学期からだ。

…って、私も、輝が話しかけてくれるまでぼっちだったっけ…

なんて回想をしてる間に、輝は私の口から手を離し、握り締められたせいで変形したチョコをあっという間に食べ終わって、生徒会室に何故か常備されてるミネラルウォーターを開ける。


「…本当に俺を助けてくれたのはマナさんじゃなくて美琴だし…」


そう、ぼそっと言った輝の言葉は、回想にふける私の耳には届かなくて、


「何て言ったの?」

と聞いても、「なんでもない。」と笑ってはぐらかした。