「彼女出来たんだって?おめでと!あーあー、でも岩城君は茉耶と付き合うと思ってたのに外れたぁー」


噂をいち早く聞き付けた茉耶の友達の女子が、授業合間に俺の元へと詰め寄る。

女友達になんでも話すとこも…!ほんとあいつのそういうとこキライすぎ。


俺の計算では、あのあと、

冗談でしたぁ!妬いた?妬いた?

って茉耶のこと弄るつもりが、予想外の返事&とんでもない事実を知った。



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「そういえばなんだけどさ、俺彼女出来たわ。」

「へぇー、おめでと。」



俺のカミングアウトに興味を示すことも無く、ピーチティーの蓋をしめる茉耶。

ん。っと俺にペットボトルを返すと、何事も無かったかのように残りの弁当の具を食べ始める。

なんか、更にイラッとした。


「ちょー素っ気ねぇのな。誰!?とか、優斗に彼女!?とか、羨ましい~とか、いつもみたいに憎たらしい言い方しろよ~」



床に座っていた俺は、構って欲しい犬のように、ツンツンと茉耶のふくらはぎを触った。

いつもなら、「汚い手で触んなよ糞が」と罵倒が飛んでくるのだが、今日はなにも言ってこず、まるで気が付いてないかのようにご飯を食べ続ける。

そんなに俺に彼女ができたのがショックだった?まあ嘘なんですけどね~

と、ネタバラシの方法を考えている間、俺より先に茉耶が口を開いた。


「んー、優斗が誰と付き合おうが私には関係無いし…なんで私が羨ましがるわけ。私には彼氏がいるし別に。」


茉耶のお得意の“論破攻撃”に、俺は頭がこんがらがった。

…ん?茉耶に彼氏?

そんな話一度も聞いたことねぇ!!

え、え、一年半も一緒にいて、好きな人いるとか付き合ってる人いるとかなんも話してくれてないってことよな?


あー、俺って、その程度の存在なんだ。
茉耶って俺のこと好きなんじゃね?とか、ちょー自意識過剰すぎて気持ちわりぃ。

…親友だからなんでも話してくれると思ってたのにな。



「…彼氏いるとか初めて聞いたし。バーカ」


何故か泣きそうになって、俺は教室を出ようと立ち上がる。


「あれ、言ってなかったっけ、ごめん」


弁当箱を片付けながら出てこうとする俺を見つめる茉耶の目は、少しだけ寂しそうに見えた。

茉耶の“ごめん”を無視して、俺は走って教室を出た。