いや、一宮先輩はもっと猫なで声だ。


気持ち悪いほどの。


「そんなことより早く数学教えてくださいっ」


「あー、じゃあ職員室行くぞ」


職員室だったらこっちまで降りてくるじゃんっ。


逃げなきゃ…。


って、なんでだ?


別に怪しいことをしてるわけでは…。


で、でも、今遭遇したら気まずい!


退散っ!


一気に階段を駆け下り、職員室とは反対側の廊下に曲がる。


「もぉ先生っ」


きゃっきゃと楽しそうな女の子の声を聞くと、胸がキューっと苦しくなって、耳を塞ぎたくなるのに、それでもその場を立ち去れなかった。