「だめだな」

 ラクベスは表情を険しくした。

 聞こえてくるのは、ゆるゆると闇から伸びる手の如く、醜い呻き声のような負の感情──それに支配され、黒くなった心はさらに深淵へと墜ちていく。

 目の前にいるラクベスの姿さえ、室田やパーシヴァルと同じように見えているのか疑わしい。

 この状態では、こちらの言葉は届かない。

 心の奥底に閉じこもり、ただ嘆き苦しみ続けている。その断片が憎しみとして現れ、完全なる魔物になろうとしている。

 ラクベスは意を決し、相手を見据えて右手を肩まで挙げた。何もなかったその手に光が収束していく。

 光は細く長くまとまり、それはまるで剣の如く実体があるようでないような、まばゆい輝きを放つ武器が具現化された。