「これをいただけますか」

「八百円です」

 小銭を差し出し、受け取った男はラクベスの背中に「ありがとうございます」と低くつぶやいた。

「──っはあ」

 店を出たパーシヴァルが苦しさから解放されたように息を吐き出す。

 ラクベスは冷や汗を拭う彼を一瞥し、店の扉をちらりと見やって再びパーシーに向き直る。

「どうです」

「ああ。あいつ、俺を見ていた」

 あの夜のことをしっかりと認識している。

「やはり、厳しい対処になりますね」

 これまでのことが、まだ無意識での行動であったならと二人は憎らしげに目を眇めた。

 ラクベスは手の中のストラップを見下ろし、苦々しい表情を浮かべる。男と目が合ったとき、事態は想像していたものよりも遙かに深刻であると痛感した。