──二人がいた住宅街から歩いて十分ほどのホテル

「狭い!」

「町から近いホテルはここだけです」

 仕方がありませんと男に苦笑いを向ける。

「よりよって、なんでバジェットホテルなんだよ」

 俺には小さいんだよとぶつくさ文句をたれて、二段ベッドの上段にバッグを投げ置いた。安ホテルにはよくある、小さな冷蔵庫から缶ビールを取り出して乾いた喉に流し込む。

「カー!」

 炭酸の刺激と冷たさに歳相応の声を上げた。

 青年はそれを見て嫌味のない笑みを浮かべ水の入ったペットボトルを手に、男が座った安いソファの向かいにあるもう一つに腰を落とす。

 ペットボトルの水を何度か口に含み、男が500ml缶を空けたところで切り出した。

「頼めますか」