「よし…」

「陽菜、今日も塾〜?」

「うん。真奈美はバイト?」

「そー。めんどくさい〜」




頑張ってね、と手を振る。
今日の授業は…なんと個別授業。



塾は週三回。
そのうちの一回をマンツーマン指導にしている。
もちろん先生は…湯川先生。



今は人気でマンツーマン指導できる生徒は昔からの私だけ。




体育の授業でくねった前髪をストレートアイロンで直す。



団体授業よりドキドキする。
先生と二人きりの授業。


私はこの日が一番好きだ。








今日の授業の予習をしていると肩を叩かれた。




「せ、先生!!!!」




わあ…今日もかっこいい…


ていうか…



「髪切ってる!」

「お、よくぞお気づきで」

「い、いつ切ったの?」

「さっき!だから生徒でお前が最初に見たの」




う、嘘…すごくラッキー。
嬉しい。


しかもなんだろう…
髪切りたての先生…いつもの何倍もかっこいい。


今日、授業になるかな…。





「じゃあ前回の確認テストからな」




いけない。

ちゃんとしなきゃ。



我に返り、確認テストに答えを書いていく。




「うん、満点。さすが。ちゃんと復習してきたな。優秀優秀」

「へへ…」




満点をとると、先生はいつも優しく頭を撫でてくれる。
この瞬間のために授業のあとの復習はかかさずやっている。





「もうすぐ中間テストだもんな。テスト対策するか」

「うん!」





個別の授業は90分。
この時間が一番短く感じる。

時々横を見ると大人っぽい首筋とかゴツゴツした男の人の手が見えて…心臓は破裂しそうになる。