ピンポーン

チャイムを鳴らしてしばらく扉の前で待つが中々出てこない。



「寝てんのか?」



一応と思いドアノブを握ってあけようとすると、

「あけっぱなしじゃねえか…」




そっと陽菜の家に入る。

靴はある。




1DKの陽菜の部屋はそれ以上に広く見えるほど物が少ない。

まっすぐ部屋に向かうとベッドの前に苦しそうにしゃがみ込んでいる陽菜がいる。




「お前…大丈夫か!?」

「せ、せんせ…」

「すげえ熱…」



陽菜を抱えてベッドに横たわらせた。



……軽いな、こいつ




「陽菜…なにか食べるか?」




顔を横に振った。




「少し寝てな」




買い物を終えると簡単なお粥を作った。

陽菜の様子を見に行くと、少し苦しそうな顔が無くなっている。




「陽菜、起きられるか?」

「………お母さん…お父さん………どこにも行かないで…」





陽菜ーーーーー


陽菜の瞳からこぼれる涙をすくった。





「大丈夫、俺がいるよ」




強く抱き締めた。


いつもの強気の陽菜はきっと作り物。
俺と同じなんだ。





「せ、先生……?」

「おはよ。お粥食べられそうか?」

「先生が作ったの…?」

「そーだよ。ほら、食べな」

「………おいしい」




微笑んだ陽菜にそっと口付けをした。




「う、うつっちゃうよ…!?」

「うん、いいよ」

「………私…先生に初めてをあげてよかった」

「初めてって………は!?」




こいつ…俺が初めてだったのか?

セフレでいいって言ってきてたから経験があるの思ってた。




「何でそんな大事なもの俺に…」

「先生がいいって思ったの。大好きな人に…大切な人に…捧げたかったの。えへ…重いよね…でも、後悔してないよ」




健気なその笑顔が俺をおかしくする。


大好きな人に

大切な人に



そんな台詞何年ぶりだろう。




守りたい。


全てをかけて……守りたいーーーーー




その日、俺の中で何かが変わったんだ。