何気ない会話から連れてこられたのは
私たちの住む場所から車で二時間弱。




「海だー!!!」

「はしゃぎすぎだっつの」

「先生こそ久しぶりの里帰りなのになんでそんなローテンションなの!」

「大人ですから」



むっかつく!


唇を尖らせる。




「なに?ちゅーしてほしいの?」

「ち、ちが…!」

「あとでな」



あーもう!

いちいちドキドキしちゃう私が憎らしい。




でも、まさかびっくりだったな。
先生の地元に来ることが出来るなんて。



奥さん…大丈夫なのかな?




「もう着くぞ」




先生の視線の先にはなにやら学校がある。




「ここって…」

「俺の母校」




車を止めて外に出ると、先生の後ろをついて歩く。



広い高校だなあ…




「俺の三年最後の席がここ」



窓際一番後ろ…



「今の私の席と同じ!」

「陽菜、こっち」



先生が指さしたのは隣の席。

座れってことかな…?



言われた通り席に座ると先生と視線が交わる。



なにこれ……

なんだか同級生みたい。




「…奥さんとは高校からの同級生なんだ」

「そんな前から…」

「あ、悪い…」

「ううん!聞かせて?」




先生は奥さんと付き合うことになった経緯とかたくさん話してくれた。


サッカー部だった先生と、そのマネージャーだった奥さん。


なんとなくお互い意識し始めて付き合うことになった。
大学も同じ大学に行き、卒業した年の23歳の時に結婚したそう。




「ーーーーだけど、長く付き合いすぎてもう恋愛とかじゃねえんだ。大事だけど、大切な存在だけど…友達、みたいな感じ」

「先生……私、先生のこともっと知りたい。教えて」




サッカー部の練習中の声が聞こえる。

二人きりの教室、自分の心臓の音………そして…



「先生……ドキドキ…してる?」

「……してる」



先生の心臓の音。


二人きりのその場所で、唇を重ねた。