驚いた私が顔をあげると、花壇の奥に植わってる木の向こうから、ひょっこり顔が覗いた。

さらさらの黒い髪。

少し鋭い切れ長の目。

ス、と通った鼻筋。

一目見た印象は、今私の前に咲いてるマーガレットと正反対……

真っ黒いマーガレットのような、人だった。

黒いマーガレットなんてないけれど。

彼は、そんな、鋭さと繊細さを強引にあわせ持ったような人だった。

のそりともたれ掛かってた木から体を起こして、彼はガリガリと頭を掻いた。

「あぁ……ちくしょ、寝ちまった。ちっ」

腕時計を確認した彼は、しゃがんだまま固まってる私へ、

「お前さ」

ぴしゃりと指と、言葉を突きつけた。

「独り言体質なのな。いろいろ呟きすぎ。マジウケる」

「ぅ、ウケ……っ!?」

そんな、初対面でいきなりけなすなんて……失礼すぎる!

「なっ、なんなのアナタ、いきなり……っ!!」

「しおちゃーん」

とその時、遠くから声が。

振り返ると、茶髪を跳ねさせながら先輩が走ってきていた。