会長はお花がお好き

逃げた先で、私はどうしても気になって訊いてみた。

「ところで会長?」

「あ? なんだよ」

「どうして昨日、『その手紙がだれのかは知らない』って言ったんですか?」

すると、会長は頬をひくひくさせながら、気まずそうに、正面を向いた。

わざとらしいくらい、ぶっきらぼうな言葉。

「バッ、お前な……あんな状況で、その手紙は俺が出しましたなんて言えっかよ!」

それを見て、笑ってしまう。

「会長……照れ屋なんですね?」

「なっ、俺のどこが照れ屋なんだよ!?」

「メッセージカード使ってるところからして照れ屋ですっ!!」

「るっせぇ!!」

絶対照れ隠しで叫んだ会長に、ついでだからこんな話。

「ねぇ、マーガレットの花言葉って知ってますか会長」

「? いや、知らね」

「恋占いですよ。『好き』『嫌い』っていうあれです」

「はっ、なんだそんなもんっ!」

「きゃ!?」

突然抱き締められる。

そして彼は、とてもはっきりと、強引に言った。

「お前は俺のもんだろ。そんな占いなんかしなくていいくらい、幸せにしてやるよ!」