微笑む女『短編』

 


夢、だったのかしら?


犬の鳴き声が今でも耳に残る、リアルな夢…?


『…帰るよ。それ、取って。』


男がスーツの上着を指さして、女はハンガーに手をかけた。


スーツの上着から男の定期入れが落ちて開き、中に挟んだ写真が床の上に舞った。


拾い上げようとして、ギクリとした。


『…これ、美和ちゃん?』


男は写真を拾い上げて、愛しそうに娘を見て頷いた。