電車内は腐敗した汗のような匂いに混じって、車輪の焦げたような、なんとも言えない臭いが充満していた。
吐きそうな気分だが、それが匂いの為なのか、精神的なものからなのか、分からない。

こんな時間の上り電車にも関わらず、車内はほぼ満席だった。


私は帽子を忘れたことを後悔し、誰にも顔を見られないように、唯一の空席へと深く腰掛け、まるで、くの字、になるような体勢で、強く目を閉じた。

閉じた瞼の裏側に、確かに見える。
車窓を後方へ後方へと流れ去る、産まれ育った街並みや風景や、そこに暮らす人々の姿。緩やかな丘陵へと沈んでいく、昨日と同じ橙色の太陽。
不覚にも、涙が零れた。



本当に、悪いのは、私だったの?。