確かに小学生の頃の麻里奈は、髪型や服装には気を配っていたものの美少女というわけではなかった。
中学の頃から可愛くなり、モテだした。
誰よりも日焼け止めを懸命に塗っていた姿を僕も見たことがある。
この前久々に会った時も、麻里奈は更に美しくなっていた。
対して、今彼女を批判しているのは、顔の粗を隠し切れない中途半端なメイクの女子たち。
可愛くなるための努力をして、何が悪いのだろう。
「ってか麻里奈のやつ、すぐインスタ映え~とか言ってそう」
「ほらこのから揚げも~」「「インスタ映え~」」
「あそこに飾ってる掛け軸も~」「「インスタ映え~」」
ぎゃはははは~! あいつならやってそう~!
女子たちの汚い声がハモる中、僕は席を立った。
「はぁ……」
ため息をついても、気だるいもやもやが体から出て行かない。
その正体は、怒り、哀れみ、くだらなさとか、そういうの。
気を紛らわそうと、店を出てすぐスマホを見た。
卓『光いつ帰ってくんの? レコ前にがっつりスタジオ入るべ!』
湯朝『お土産はいらないから。その金で自分の飯を買いなさい^^』
クミ子『フェス楽しかったよー。来年は光くんもオーディションでなよ!』
ピロ『早く野外で光くんのライブ見たい!』
ラインに届いていたのは新しい仲間からのメッセージ。自然と顔がほころぶ。
ありがとう、と心の中でお礼を言っておいた。
今、僕がいるべき場所は、ここ――地元ではない。

