さようなら、ディスタンス。




「なにそれ! ずるいよ!!」



とっさにそう言ってつなぎとめた。


自分でも驚くほどの大声が出てしまった。


隣でパソコンを打っている男性ににらまれ、その奥の女子2人組が笑いながらわたしに注目した。



なにこれ。嫌だ。


ここ東京でしょ? たくさん人がいるんだから、わたしなんかに注目しないでよ。



終話マークは押されなかったらしい。その代わり彼は容赦なく私の心を刺してきた。



『ずるいのはそっちでしょ。彼氏いるくせに』



悲しいんだか、恥ずかしいんだか分からない。


頭がかっと熱くなる。手が震えそうになる。



「は? あんただっているじゃん。彼女!」


『とっくに別れてるけど』


「は……?」


『何? 俺のこと共犯にしたかったの?』



別れてる……って?


待って。うそでしょ。そんなわけない。



麻里奈さんのインスタからの情報を懸命に思い出す。


花束とか寝落ち通話とか、いろいろやってたみたいじゃん。その他にもいろいろ……。



「……あ!」



ここでやっとあることに気がついた。



ネット上からいろいろ推察してきたけど。



麻里奈さんとの遠距離恋愛について。


わたしは祐希の口から一度も聞いたことがなかった。